和の國ブログをご覧の皆さま、こんにちは。
「熊本ゆかりの染織作家展」実行委員の安達絵里子です。
2カ月に1度の「熊本ゆかり便り」です。

11月に入り、いよいよ秋の深まりを感じて、こっくりとした茶や紫を着たくなる頃となりました。
紅葉に流水を取り合わせた竜田川模様や菊尽くしもぴったりの季節です。

さて、先日國さんが書いてくださっていましたが、10月27日から11月1日まで、熊本県伝統工芸館で、「堀絹子 染織45年展」と堀さんの「真弓工房 手織教室染織展」が同時開催されました。
併せて記念祝賀会も催されたので、今月はそれをご報告いたします。

手先が器用で、きものがお好きだった堀さんは、義兄である小代焼の井上泰秋氏の勧めで染織の道に入られました。
そして倉敷の外村吉之介氏のもとで染織の基礎と民藝の心を学び、後に人間国宝になられた沖縄の宮平初子さんのところでも修業されました。
さらには盛岡の蟻川紘直氏にホームスパン(羊毛の手紡ぎ、手織り)や木綿織も習われて、あらゆる染織を習得されました。

その後、結婚、出産をされ、病気とも闘いながら染織の道を歩み続け、熊本市内の自宅兼工房に教室を開いて後進を育て、さらには日本民藝館展や国展などにも出品し、入選や受賞などを重ねて来られました。
我が「熊本ゆかりの染織作家展」にも初回から渾身の作をご出品くださり、和の國の目が肥えたお客様にも人気を博しているのは、皆様もご存じのことと思います。

本当に……。
このように数行で書き尽くせる堀さんの45年ではないでしょう。

展覧会場で拝見した作品は、いつもながら染織の粋(すい)を極めたみごとな出来栄え。
経緯に用いられた糸の照りの美しさ。
それを生かした滋味ある染色。
気が遠くなるような手間仕事の経絣。
織のアクセントになる浮き織。

日光東照宮の陽明門があまりにみごとで「日暮の門」といわれるように、私にとって堀さんの作品は「日暮の織物」。
見れども飽かぬ深い境地に誘われ、うっとりと眺める自分を、作品の前からひっぺはがすように会場を後にしました。

そんな堀さんの記念祝賀会は、ほんとうにあたたかい心豊かな会でした。
熊本ゆかりの染織作家の岡村美和さんも、ご自身で型染されたステキなきものをお召しで、さすがの着こなし。
そして、なんと司会には國さんが抜擢され、お謡も披露され、大変なご活躍でした。
國さんは本来?のユニークキャラクターを極力抑えた名司会ぶりで、あたたかな会の雰囲気を盛り上げるさまは、完璧のひとこと。
いつか私の祝賀会があれば(あるわけないのですが)、國さんにお頼みしたいと思うほどでした。

写真は、会場の皆さまにお願いして、堀さんの作品を身に着けている方に壇上にお集まりいただき、撮影したものです。
私も前回ご紹介した「あかしの君」きものを着て仲間に入れていただいています。

どうです、ステキだと思いませんか。
私はこれまで自分のきものや帯のことばかり考えて、堀さんの作品にあこがれていましたが、「男物のスーツもいいなあ」と改めて思いました。
要領の悪い私は、いつも夫の「内助の功」に助けられていますから、いつかこれで恩返しをしようかな、という思いが芽生えました。

それにしても、堀さんのご主人によく似たご子息のご立派なこと。
病気で思うような子育てができなかったと会場で回顧する堀さんでしたが、いえいえ、堀さんが生きる背中を、ご子息はちゃんと見て育たれたのだなあと、つくづく思いました。
私も愚息を見てためいきをつかずに、自分自身がしっかり生きねば、と思った次第です。

堀さんの作品は、和の國を通して見ることができますので、関心を抱かれたかたは、どうぞお問合せくださいませ。

今月もどうもありがとうございました。
熊本ゆかりの染織作家展実行委員 安達絵里子