お一人でも多くの方に、着物で笑顔になって頂きたいと思いお仕事をしています。
はじめまして、熊本市にあるきものサロン和の國の緒方麻由子、27歳です。
当社では、主にホームページの更新など、パソコンを使った業務の他、着付け教室のお手伝いをさせていただいております。
三人姉妹の長女として育った私、小さい頃から外で活発に遊ぶ子どもでした。家の近くにある竹林に入って探検したり、秘密基地を作ったり、木の実を取って食べたりと、自然の中で過ごしていました。男勝りなところもあり、男の子と喧嘩することもしばしば、地域の相撲大会で五人抜きをして賞金を勝ち取ったこともありました。
当時は体を動かすのも得意で、小学校の時には「30人31脚」(二人三脚の30人バージョン)で、全国大会優勝、ギネスブックに掲載されました。中学校の時には、バスケ部に所属しながらも、選抜の陸上メンバーとして、陸上記録会へ参加していました。
進路について考えるきっかけに
高校2年に上がる春、父が突然くも膜下出血で倒れて他界してしまいました。延命装置を外しますか、という話を聞いた夜のことは忘れもしません。私が通っていたのは進学校の熊本県立第二高校。妹は中学2年と小学2年生だったので、就職することも考えました。しかし、父から「(私たちには)大学へ進学してほしい」と言われたことを思い出し、できるだけ負担のかからないように国公立大学を目指すことにしました。
進路を考え始めた当時、私は心理学に興味がありました。それは、父が亡くなった時に一番下の妹が涙を見せなかったことがきっかけでした。と申しますのも、まだ幼い妹は父親との一生の別れをどのように受け止め感情を整理したのだろう、心にどれだけの負荷がかかっているのだろうと、とても心配になったからです。調べたところ熊本大学で心理学の勉強ができることを知ったので、色々考えた結果、熊本大学教育学部への進学を決めました。
いざ大学生活が始まると、あっという間に、卒業後の就職を考える時期になりました。周りが学校教員や幼稚園教諭を目指していく中、何度も「自分も同じように教員になったほうがいいのではないか、その方が楽なのではないか」と思ったことがあります。しかし、教育実習を実際に経験してみて、私は教員向きではないと感じ始めました。ついて行けない子よりも全体を優先することがどうしてもできない自分がいたからです。また、4年間教育現場に関する勉強をしてきて、これから先も教育界で生きていくことを考えた時に、ふとこのままでいいのか、という不安を抱きはじめました。
将来に悩んだ時、自分が好きなことは?と問いかけた
悩みに悩んだら、学校へ行く意味が分からなくなってしまい、大学へ通えなくなった時期もありました。自分の存在の意味さえもわからなくなってしまったのです。思い切って教育の世界から離れて、自分の好きなことを洗い出してみよう、と考えた時に浮かんできたのは「着物」でした。祖母が華道の先生をしていて、幼いころから着物姿をよく見ていたこと、成人式では着物を着る喜びに加え、祖父母がとても喜んでくれたこと、大学の授業で浴衣制作を行った経験があったことなどが主な理由でした。
周りと違う動きをすることに、とてつもなく大きな不安を抱きながらも、就職先を探していたある日、何気なく求人誌を開いていたときに見つけたのが、現在の仕事です。ここなら、私のできることがあるかもしれない、と、すぐに電話をかけていました。
和の國で学んだこと
和の國にご縁をいただいた当初は、着物に色々な種類があって、それぞれに違う用途や特徴を持つことも知らなかったのですが、現在も仕事を通してひとつひとつ知識を増やしている最中です。
学んでいることは、着物のことだけではありません。和の國には、日本人が昔から大切にしてきた「季節感を重んじる心」や「細やかな気配り」などが、至る所に散りばめられています。例えば、空間を彩る季節のお花は、ただ生けられているのではなく、葉の枚数や広がり方、花器とのバランスも考え尽くされています。お客様から、店内に飾られているお花のことを褒めて頂く度に、時間をかけて生けられているおかみさんや國さんの姿を思い出します。
置かれている調度品も、こだわりぬかれたものばかりです。一つ一つは時代や作者も違うものなのに、どうしてこれまで調和が取れているのかと不思議になったことがあるのですが、きっとそこには共通した、國さんの「“美しさ”への揺るぎない観点」が存在するからなのだろうと思います。
掃除の仕方やお茶碗の扱い方、お茶の出し方、言葉の遣い方、電話での話し方や印刷物の折り方まで…和の國の空間を作り出すには、一つとして手を抜いたものがないことを知るとともに、私がいかに自分流で生きてきたかということを思い知る毎日です。教わることを一つ一つ大切に身につけていくことで、「着物」について学ぶ以前に、「一人の日本人」として成長させていただいているのだと感じます。
また、仕事を通して自分を磨く、という言葉を日々体感できるのも、和の國ならではだと思います。
いただいたお仕事を、一つひとつ確実に丁寧にやり遂げて行くことが、どれだけ大切なことで、自分の力になるか。和の國で仕事をしていると、「“当たり前”という言葉の重み」を感じることができます。
また、仕事に終わりはないことを学んだのも、和の國です。一つ区切りがついたら、見直し、加筆修正を加え、また見直し・・・その繰り返しの中に、きらりと光る結果が見えてくることを、私は仕事の中から教わりました。
学生の時分は、「出来たら終わり」。それはそれで、達成感は味わってきたつもりですが、きっと達成感の程度が全く違っていたのでしょう。仕事を始めてから6年目、未だに本当の意味でのゴールを、私はまだ体験していないのです。
行き詰ったら他の人の知恵をお借りする、出来たことを皆で喜び合う、協力し合って和の國を作り上げていく、足りない所はしっかりと教えて頂き、導いてくださる・・・。日々あたたかい言葉が行き交う、もう一つの家族のような和の國を、私は本当に素敵な場所だと思っています。
着物を着る喜びをお伝えしたい
目の前の事を覚えるのに必死だった私も、和の國を通じてお客様に着物で笑顔になっていただきたい、という心で日々の仕事に取り組むようになりました。
加えて、いつの間にか、自分が着付けを『お伝えする側』としてお手伝いさせていただくようになったことは、思ってもいないことでした。
少しずつ、私の言葉で着物を着る喜びをお客様へ、これから着物を着ようと思っていらっしゃる方へお伝えしていきたいと思っております。
どうぞ、皆さま和の國へお出かけくださいませ。心よりお待ちしております。