岐阜県の郡上八幡地方で織られている、草木染め手織紬です。郡上八幡の農家では古くから手機で織る自家用の紬が織られていました。普段着であったこの紬は、明治時代以降、衰退の一途をたどっていましたが、それを再興したのが人間国宝である宗広力三氏で、現在の郡上紬を作り上げました。

郡上紬は、質の良い春繭からとれる糸を、植物染料を用いて染め、織り上げられます。郡上に自生する植物染料である、茜(あかね)、苅安(かりやす)、阿仙(あせん)、藍(あい)などを用いて、何十回も繰り返し染める手法がとられていて、深みがあり、温かみのある色合いの、堅牢(けんろう)な糸ができあがります。 白州正子氏により、世に紹介された郡上紬は、広く知られるようになっても大量生産をせず、丁寧な仕事と伝統を守る幻の紬といわれます。