早朝から上海出張の荷物をスーツケースに入れ、長崎空港へと向かった。成田から17名、長崎から2名フライト予定で、現地で合流する為には便も丁度良いからだ。中国の航空会社の飛行機に搭乗した。エコノミー席に座っていたにも関わらず、キャビンアテンダントの対応が格段にいい。おまけに、「キャン、ユー、スピーク、イングリッシュ?」ときた。「アッ、りとる~」と答えたら、関を切った水のように、どんどん英語が来た。どうやら、着物を着た日本人に興味を持って、話をしたいらしい。その雰囲気は分かるが、返答が出来ない。英語の学びも時々だから、こういった時は本当にドキドキだ。そんなこんなで、3泊4日の旅が始まった。「帝国ホテルに着物を着て、英語しか話さないでチェックインしたい。」という個人的な夢が現実になるには、まだまだ越えなければならないハードルがたくさんありそうだ。 何処へ行こうが、着物を着ること自体日々の営みだか、本日は綿麻の着物を着て絽目の黒の袖なし羽織を装っていた。空港の待合でもやはり視線を感じる。寄せては返す波のようだ。しかしながらその視線が、衿を正し背筋を伸ばす要因になっていることに気づき始めたのは、いつごろからだろうか。昨今、人目にさらされることにも慣れてきて、少しずつ着物を着ることのプレッシャーが薄れてきたような気がする。「背筋を伸ばしあごを引く。姿勢は気迫の第一歩」と書き記した「和の國手帳」の一節が頭をよぎった。