和の國ブログをご覧の皆さま、こんにちは。
「熊本ゆかりの染織作家展」実行委員の安達絵里子です。

椿のかたいつぼみに赤い色が差してくるのが楽しみな季節になりました。
袷のきものを着ての外出が心地よく、まさにきものシーズンの到来です。

今回の「熊本ゆかり便り」では、熊本ゆかりの染織作家のおひとり、
吉田美保子さんの個展、「吉田美保子展」です。
折しもご案内ハガキもできあがってきました!

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清正公の陣羽織 ―― 吉田美保子展
とき:2016年11月21日(月)~23日(祝・水)
   *20日(日)は予約制のお披露目会を開催
じかん:11時~19時
ところ:きものサロン 和の國
    熊本市中央区城東町4-7 熊本電気ビル1F
    電話096(359)0805

◎お披露目会をします (11月20日[日])
 いの一番に吉田の新作をご覧になりたい方、特別にご案内いたします。
 予約制です。お気軽に和の國まで、お申込みください。
 
◎トーク会をします(11月21[月]・22[火]・23[水]14時~)
 各回30分程度 お申込み不要 無料

大地震がふるさと熊本をおそった。遠くに住む吉田を心底震わせた。美しい熊本城が無惨な姿だ。築城した加藤清正公に思いをはせた。「せいしょこさん出番ですよ!」復興の陣頭指揮をとってください。せいしょこさんはどんな陣羽織を着る?吉田もputitせいしょこさんになって、帯とショールを織ります。(せいしょこさん=清正公)

売上金の10%を熊本城災害復旧支援金に寄付いたします。

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いつもの和の國のご案内ハガキとは一風変わった縦長サイズ。
これには吉田美保子さんの個展にかける思いが目一杯詰まっているのです!

個展のテーマは「清正公の陣羽織」。
熊本城を築城したり、治水工事を精力的に行ったりして、現在の熊本の基礎を作った戦国武将・加藤清正公に思いを寄せて、一連の作品群を制作したものです。

このたびの熊本地震による惨状を目にした吉田さんが「清正公なら、どのように考え、行動するだろう」と思い、清正公のパワーを現代にもみなぎらせることができたらと願いを込め、清正公に成り代わったつもりで作品制作に取り組んだそうです。

戦国武将が活躍した時代は、鉄砲とともに南蛮文化がもたらされ、時の為政者である有力武将たちは競って外来の染織品を身にまとい、威風を漂わせました。
なかでも目立つのは猩々緋。
コチニールやラックダイなどの動物染料を用いて毛織物に染めた猩々緋は、これまでに見たことのない、目が覚めるほど鮮やかな真紅で、下剋上や旧習打破して世を渡る戦国武将たちの気風に合ったといいます。

そこで今回のメインテーマ色に、命のほとばしるような猩々緋を選びました。
もちろん昔を厳格に再現するというのではなく、平成の今の時代に似合う「吉田美保子の猩々緋」です。

ご案内ハガキに掲載されているショールも、そんな吉田さんの猩々緋のバリエーション。ほかに元気な熊本をイメージしたブルーや黄色のショールも制作中だそうです。

切手を貼る位置などに配されたのは、蛇の目文。
加藤清正の紋です。

そもそもこのハガキは「熊本の人間で陣を組みたい」と、熊本の幼馴染みに発注してデザイン制作したそうです。

さて、ここでようやく話を戻しましょう。
ハガキとしては細長いフォルム。
これは何を隠そう、戦国武将の旗指物(幟旗)をイメージしたものなのです!

合戦図などの絵巻物を見ると、甲冑に身を包んだ武将たちとともに旗指物が目立ち、それを目印に敵味方を判断していたことが分かります。
「吉田美保子展」のご案内ハガキ……この旗のもとに集結して、熊本の困難に皆で立ち向かおうではないかという、美保子さんのメッセージでもあるのです。
「おのおのがた、ぬかりなきようご参集あれ!」と武将気分で、つい口にのぼりそうです。

吉田美保子さんによれば、清正公の遺品と分かっているものは少ないそうですが、清正公は天下人の豊臣秀吉に仕えていただけあって、やはり「しゃれ者」であったと吉田さんは推測しています。
そうして残された資料からイメージをふくらませ、現代に似合う帯やショールを創作されたそうです。
その数、帯が約10本、ショール20点、タブロー10点ほど。

今回ショールを多く制作したのは、きものを日常的に着ない方にも、という配慮もあるそうですが、「清正公の羽織るものが陣羽織であるなら、現代人の羽織るものはショールだろう。このショールで寒さや困難から身を守ってほしい」という美保子さんの願いによるものでもあるそうです。

個展にかける意気込みを美保子さんにインタビューしてみました!
「私が熊本のために、染織家として何ができるだろう。そう考えると、やはり作品作りしかないのです。そうして制作したものをお買い上げいただき、いかに多くの諭吉を熊本城に送り込めるか。それに尽きると思います。ただいま戦陣に臨んでいるつもりで精一杯いいものを作るべくがんばっています。ぜひ多くの方にご来場いただきたいと思います」

なるほど。
「諭吉」とは、一万円札に印刷された、明治の賢人・福沢諭吉のことですね!
吉田美保子さんは今回の個展で、売り上げ金の10%を熊本城災害復旧支援金として寄付すると明言されています。
ひとりでも多くの「諭吉」を、熊本城に参上させましょう!
皆さまどうぞご協力をよろしくお願いいたします。

また、期日が近づきましたら、この和の國ブログにて展示内容の詳細などお伝えしていきたいと思います。どうぞお楽しみに!
今月もどうもありがとうございました。

熊本ゆかりの染織作家展実行委員 安達絵里子