僕ときもの     

僕にとって、「きもの」は『お袋』だ。何でも教えてくれる。

例えば、体がチョッときつい時やチョッと考えが後ろ向きの時は、角帯をキュッと締めることによって、しゃんとなる。

自然に姿勢が伸びてくる。おヘソの下の「丹田」の場所が気持ち良くなる。

そこに帯がくることで、体のバランス感覚も良くなる。

とにかく、ピシっとなって「さあ、今から頑張ろう!」という気持ちにさせてくれる。

また、街を歩くときもそうだ。

男性の着物姿は、お正月以外は街で見かけないので、とっても視線を浴びる。

信号待ちの時には、まるで空港の保安検査官のように、上から下までくまなく見られる方もある。

病院や銀行などもそうだ。まるで寄せては返す波のように、僕が右をむけばボクを見ている人も、何気なく右を向かれ、面映かった。

だから、そこに行きたくなかった。

うわさ話が聞こえた事もある。でもずっと着物をきていたら、僕もだんだん慣れてきた。

「しゃん」としていれば、他の人の視線がだんだん気にならなくなった。

返ってその視線があったからこそ、ボクも「肥後もっこすの気質」で頑張れたと、今は思える。

やっぱり着物姿は、猫背で曲がって歩いていても似合わないしかっこ悪いので、段々姿勢を意識して、まっすぐになってきた。

そうしたら、たぶん考え方までまっすぐになってきた。

また、袴を履くと、袴板がおヘソの真後ろの背中に当たる。

その場所に袴が当たると、後ろからとグイッと背中をおしてくれるような気になる。

「頑張れ、頑張れ!」…と。