和の國ブログをご覧の皆さま、こんにちは。
「熊本ゆかりの染織作家展」実行委員の安達絵里子です。

水無月6月。外を歩けば日に日に紫陽花が色づいてきて、季節の巡りを気づかせてくれます。
きものの世界でも衣替え。いよいよひとえ仕立てのきものが本番の季節となりました。
そんな季節におススメのきものと帯を、「熊本ゆかりの染織作家展」出品作からご紹介しましょう。
今月の作家は、「熊本の至宝」(と私が勝手に認定している。でもこの方のあらゆる染織技術や染織にかける真摯な姿勢は、「人間国宝」どころか「人類の至宝」とまで思っているのがワタクシのホンネですよ)・堀絹子さんです。


堀絹子作・木綿着尺 ¥308,000(仕立て代、税込)

涼しげな色合いの木綿織物です。
「國さん効果」で、和の國ファンの方々はきっと、一枚は木綿のきものをお持ちなのではないかと推察しています。
かくゆう私もそのひとりですが、木綿のきものは本当にイイです。

さっぱりとした地風で、着崩れることがなく、また自分で洗うこともできる……この親しみやすさは、個人的な感想で言いますと、離れて住む実家の母と長電話している心持ちに似ています。
飾ることなく、自分らしく、安心してのびのびできる感覚、とでもいいましょうか。

紬や縮緬など、絹物には絹物の良さがありますが、木綿は絹物にはない素朴な味があり、それぞれに楽しめるというのは、きものを着る喜びを倍増させてくれるものです。

さて、話を堀さんの木綿織物のきものに戻しましょう。
本作は、木綿のきものといっても、作家が色を吟味して染め、そして手織りした「作品」でもあります。
手織りならではのしなやかな地風なので、より気軽な機械織りの木綿に比べれば、ずっと上等品。上のランクになるものです。
家庭着にするにはもったいないほどで、レストランでの食事や美術館での芸術鑑賞などにぴったりのおしゃれな街着になります。

袷仕立てで着てもいいのですが、個人的にはさっぱりとした着心地を楽しむためにひとえ仕立てがオススメです。
裾裏に広く居敷き当てを付けるとシワ付きが防げて、着姿もキレイに見えると思います。

木綿織物の良さを語ってきましたが、私が本作ですごいと思うのは、その「おしゃれ度」です。
さりげない格子の織物ではありますが、組織織りが入り、その織りの変化によって一般的な平織とは違った通気性と布面の表情が味わえるのです。
普段着の代表である木綿織物に、これだけ真正面から真面目に取り組み、唯一無二の織物を創作する染織作家は貴重な存在といえるのではないでしょうか。
そこに堀絹子さんの姿勢がうかがえ、私なぞはノックアウトされてしまうのです。

糸を染める染料は、堅牢度の高い化学染料がメインだそうですが、色味を落ち着かせるために植物染料を重ねて染めているとのこと。
水色地に、紅梅や鬱金色の縞が入り、すっきりとした白をアクセントにした、着こなしやすい色目も魅力です。

袷仕立てなら袷の季節に、ひとえ仕立てでも暖かさを感じる3月頃から6月、盛夏を終えた9月から10月末頃まで長く着られそうです。
本作のような地風と色柄なら、もしかしたら真夏でも冷房が利いたホテルでのクラス会などに着られるかも。
……詳しくは、和の國にご相談くださいませ。

合わせる帯も楽しめそうです!
雰囲気が合えば、染め帯でも織りのなごや帯でも、自由に合わせられるでしょう。
次にご紹介する帯も、抜群の相性を見せます。


堀絹子作・木綿八寸帯 ¥178,000(仕立て代、税込)

化学染料で得た色にヤマモモをかけて色を落ち着かせたという紫に、奥行きのある表情があり、木綿のきものだけでなく、雰囲気が合えば袷やひとえの紬にも締められる「格」があります。

堀さんらしい味といえば、横段に浮き織の組織を入れて、色だけでなく織りのアクセントをつけているところ。
お太鼓に豊かな風趣が備わります。
また、帯幅の左右で配色が異なっていますから、前帯の出し方を変えて締め分ける楽しみもあります。

そして何より、木綿の織り帯は締めても緩まず、またハリがあるため、お太鼓がキレイに整いやすいのも、うれしいポイント。
初心者こそ木綿を、といいますが、ハードユーザーにとっても、やっぱり心丈夫で頼もしいのがこんな帯。特に時間がないときには重宝します。締め直すという心配がないので。(出かけ前にアタフタするのは私だけかもしれませんが・・・)

堀さんはご自身もステキに自作を着こなされる方なので、着る人のことを考えて創作してくださるんだなあと、作品を見ていて思います。

今回ご紹介した作品は、和の國店舗にてお預かりしておりますので、どうぞ実際に手に取り「熊本の至宝」作品と心の対話をなさってくださいませ。

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さて、お知らせです。
6月18日(水)~23日(月)まで、熊本の鶴屋百貨店にて第49回西部伝統工芸展が行われます。
「熊本ゆかりの染織作家展」でお馴染みの型絵染作家、溝口あけみさんが23日の正午から解説をなさるそうです。
私も拝聴にうかがう予定ですが、和の國ブログをご覧のみなさまも、和の國にお出ましになるついでにいかがでしょうか。
熊本の作家さんを応援しましょう!

今月もどうもありがとうございました。