和の國ブログをご覧の皆さま、こんにちは。
「熊本ゆかりの染織作家展」実行委員の安達絵里子です。

秋が深まる11月に入りました。
お茶の世界では「お茶の正月」――炉開きをして、今年の新茶を初めていただく口切の茶事をされるそうで、きもの姿がしっとり映る好季節になりました。

さて、「口切りの茶事」さながらに、今年の第4回熊本ゆかりの染織作家展にてお求めいただいた帯を初めてお召しになる、という一報をお聞きし、早速取材してまいりました。

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進化する織りのアーティスト、吉田美保子さんの帯をお締めになったSさまです。
たいへんお美しい方でよくお似合いなのに、お顔までご紹介できず申し訳ありません。
この帯は、昨年の「熊本ゆかり便り9月」でホヤホヤの新作としてご紹介しましたが、さすがお召しになった方がステキに映えます。

帯は、アメリカの抽象表現主義を代表する画家マーク・ロスコ(1903‐1970年)へのオマージュ作品「ラブ・ロスコ」シリーズの一点で、タイトルは「ピンク&チャコール」。

なんとSさま。大のロスコファンなのだそうです。
「以前NHKの日曜美術館でマーク・ロスコのことが放映されたのです。
色使いがとてもシンプルで2、3色の組み合わせただけで人に感動を与えるのはすごいと思いました。
色があふれかえっている世の中で、練りに練って最小の色で表現された作品に、ぐっと心をつかまれました」

これを締めてロスコの絵が収蔵されているワシントンDCの美術館に行ってみたい!
そう強く思われたそうです。(カッコいい!!!)
会場には「ラブ・ロスコ」シリーズは3点ほどありましたが、元々ピンクとグレーのコンビネーションが好きだったSさまは、この帯を選ばれました。
お手持ちのダーク系のきものにきっと合うと頭に描かれたそうです。

合わせたきものは黒褐色地の大島紬。
象牙色の帯締めでスッキリと決めて、帯が主役のステキな着こなしです。
感想をお聞きしてみました。

「初めて締めるのに、ぴたっと吸い付くように体になじんで、とても締めやすくて驚くほどでした。
ざっくりした感触の帯と思っていましたが、締めてみて、光が宿っているように光沢があるのに気づきました。
繭本来のやわらかな光沢がそのまま表れている、と感じてうれしくなりました」

ともすれば色柄のデザインに目が行きますが、素材の良さに気付いていただけて、作家の吉田美保子さんも喜ばれることでしょう。
経に絹の練糸を用い、緯糸にカンボウジュ(東南アジアで吉田さんが手に入れた野蚕に近い家蚕)や、きびそ糸(蚕が糸を吐き出す最初の部分)などを織り入れるなど、原材料となる糸は、作家が格別のこだわりを持って選び抜いたものだからです。

糸を選び、染めて、下ごしらえをし、織って、仕上げて……その工程は吉田さんのサイトページ(「こんなふうに作っています」)にも記されていますが、糸と向き合い、糸に託した思いを、着る人が、着心地の良さや織り目の表情で感じ取れるというのは、ホントに素敵です。

「ピンクとチャコールグレーの染め分けのように見えますが、グレーの部分にわずかにピンクが入っていたり、その逆もあったり、眺めているといろいろな発見があって楽しいのです」

「私は趣味で十数年水彩画を続けているのですが、この帯の色のにじんだ感じが、水彩画を描いている時の濡れた状態のにじみ具合に似ていて、そこも好きなんです」

私はSさんに教えていただいたような気がしました。
吉田美保子作品の魅力のひとつを。

吉田さんは経糸の染め分けを、絣括りして糸染めする昔ながらの手法ではなく、機にかかった状態で色を摺り込む「摺り込み絣」という新しい手法で行います。
その摺り込み絣の味が、「水彩画」の味に通じるものであると思うと、腑に落ちたような気がしたのです。

染織の王道からすれば、昔ながらの手法の方が評価されるでしょう。
しかし作家は、展覧会で評価されることではなく、「表現できることの可能性」を常に求めて創作活動をしています。
それを自然に評価して受け止めるSさまもまた、芸術を愛されるきもの通でいらっしゃいます。

この日、Sさまは初めて締めた報告を吉田美保子さんにしてくださったらしく、吉田さんはたいへん喜ばれ、私にまでお礼のメールをくださいました。
「熊本ゆかりの染織作家展」で生まれた、美のご縁。
次の第5回でもそんな幸せな出会いがありますように―――。

次回、第5回熊本ゆかりの染織作家展は、2015年1月3日(土)~6日(火)に予定しております。
作家の方から直接お話をお聞きできるトーク会や、恒例となった「熊本ゆかり帯あげ」も企画しております。

今度の第5回で節目を迎えますので、以降は一年おきの開催となります。
第6回は2年後と、先になりますので、どうぞ万障お繰り合わせのうえ、ぜひともお越しくださいますようご案内申し上げます。

今月もどうもありがとうございました。

「熊本ゆかりの染織作家展」実行委員 安達絵里子