きもの宣言25周年記念展 熊本市中央区 着物専門店 わのくに

皆さま、こんばんは。茨木ゆりです。
今年は、主人の『きもの宣言』から25周年ということで、先日お客様にご案内状を出させていただきました。その中に、私からもご挨拶文を入れさせていただきました。お付き合いいただけましたら、ありがたく思います。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

結婚して5年目の夏に突如スタートした主人の「きもの宣言」でした。
長男3才、長女1才、私は26歳でした。「普通の暮らしがしたいのに。これから一体、どんな生活になるの…?」
不安は的中しました。家事・育児・店の仕事に加え、思ったら即行動!の主人に振り回される日々がスタートしました。

突然、主人から「行くばい!」の号令がかかります。
「えっ?」と言う間もなく私は着物に着替えます。
慌てると、着崩れすることも多いです。
出かけることも不慣れな私に、着物姿という緊張感が加わります。

脱いだら「ふーー。」となりますが、きちんと着物をハンガーに掛け、小物を片付け、夜に畳む…。着物の日が増えるにつれ、次第に一日一日を大事に生きようと思うようになりました。

実は、主人も「宣言」を後悔したことがあったのではないかと思います。
あの主人が無口になり、外出がめっきり減った時期がありました。
「車に洋服を入れておけば良かった…。」と冗談まじりに聞いたのは、十年程経った頃だったと思います。
しかし、決して弱音を吐かず、今なお着物を着続けている主人に、尊敬の念を抱いています。

 
この度、「きもの宣言」25周年を迎えた主人に、「着物から『豊かな和の心』を育みたい」との思いが沸いてきたようです。
そこで、私にとって「着物が育んでくれた心」について改めて考えてみました。
すると、着物に守られ、支えられ、癒され、導かれてきたことが見えてきました。

常に主人は、自分の眼で見て確かめる性格なので、全国の産地や染織作家さんの工房を見学させていただくことが、私にも幾度となくありました。卓越した技術を持つ職人さんの仕事振りを目の当たりにすることで、その着物を着ていると、その方々に見守っていただいているような気持ちになります。まさに、母の着物をまとう感覚です。

また、職人さんには「最高の着物を作りたい」という強い思いがあります。糸・染・織・仕立などそれぞれの技が集まって、一枚の着物が完成しています。日本のトップレベルの職人さんの魂が着物から伝わり、私の心を強く支えてくれます。また、時には癒されるような気持ちになります。

着物姿は全身を包んでくれます。襦袢から着物、そして帯へと幾重にも重なるので、守られているような安心感や安定感があります。加えて、周りの方からちょっと褒められる嬉しさ、人様の優しさを感じるぬくもりがあります。
シミが付かないよう気を配り、脱いでは畳むことを繰り返すので、丁寧に生きることの大切さも教えてくれます。着物姿にふさわしい、美しい所作を心がけようとも思います。


主人の奇想天外な「きもの宣言」でしたが、年月を経るにつれ、私も着物に導かれていました。
いつしか私の中に、豊かな心が育まれてきていたようです。
「着物から『豊かな和の心』を育みたい」という主人の思いを叶えるために、私も皆さまとともに歩んでいきたいと思います。

                          きものサロン和の國 茨木ゆり

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


8月23日(木)〜27日(月)に、『茨木國夫きもの宣言25周年記念展』を開催させていただきます。台風が気になるところですが、主人への激励に、お立ち寄りいただけましたら嬉しく思います。

本日もご覧頂きまして、誠にありがとうございます。